BUILDING
SHOUSEIMARU

丸竹水産商店所属 
10トン級伊勢湾型底曳き漁船の製作


building by Phillip Bowker/製作 フィリップ・ボウカー
フィリップ氏の個人ホームページ
 

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Part 1

これまでのあらすじ、
または 「なぜウチの漁船が、イングランドで模型化されることになったのか」について

今から概ね2年前、以前から付き合いのあったイングランドの友人ジョン・ハリルド氏の招きで、彼の住むウェストヨークシャー州ドゥーズブリーを訪ねました。ハリルド氏は主にフラットフィギュアを楽しんでおられるのですが船舶模型も好きで、当地の船舶模型クラブ「カークリーズモデルボートクラブ」にも所属しています。このクラブは、悠悠自適の生活を送るこの地域の模型好きのおじ(い)さんたちが、週に2回、大きな池のある公園にあつまり、自慢のラジコンボートを走らせまくるという、趣味の国イングランドらしいクラブです。私が訪れた際、そのクラブのミーティングを見学させていただきました。
イングランドらしく、公園も池もたいへんよく整備されていて、美しい景色の中、ラジコンボートに興じるおじいさんたちの姿は、なんとも微笑ましいというか、羨ましい老後の過ごし方でありました。



この訪問の際、クラブの代表フィリップ氏に「私は日本の漁師で職業がら船が好きなんです」と話すと、「ほう、すると君は船を持っとるのかね。それはどんな船なんだい?」と興味津々。

「全く大きくないです。シップじゃなくてボートです。え〜と、重さはカラッポの状態で9.6トン。フィッシングギアを満タンにロードして16トンくらいです。全長は16メートルだから、え〜と大体50フィート強。
漁は日帰りなので、宿泊するような設備はありません。
ジャパニーズ・フィッシングボートというと、ツナボート(マグロ延縄漁船)や、昔のホエーラー(捕鯨船)が有名ですが、ウチのはオーシャンに出られるようなシップではなく、ベイの内側で操業するプライベートなフィッシングボートなんです・・・。」

「うむうむ、インタレスティングだ。ワシも余りデカイ船は好かん。
ところで、そのボートが君のウチの持ち物だとすると、ブループリント(設計図)とか持ってるのかな?どうだろう。ひとつワシにコピーを送ってくれないかね。もし良ければ、君のフィッシングボートを作らせてもらいたい。」

願ってもない申し出に、私の答えは「オフコース、イエース!」
かくしてウチの漁船が、イングランドのシップビルダーによってモデル化されることになったのです。


自宅に帰ると早速、親父に設計図はどこかと尋ねると、建造した造船所が持っているとのこと。ウチの船の進水後、数隻の同型船が作られたのです。ウチの船は「ショーセイマル・クラス一番艦」というわけです。

ところが何と、その造船所は既に倒産していて、だいぶ前から連絡が取れないというのです。

困った、これは困った。

とにかくこの辺の事情を、ハリルド氏に説明。残念ながらブループリントは行方不明なので、写真で何とかならないか、フィリップ氏に訊いてくれるよう頼みます。
返事は写真でもOK。船底を掃除のため船を陸揚げした際に、写真を撮って、要所を計測することにします。

船底掃除は、本当は水中金属部分の保護亜鉛交換のため、年に2回くらい行わねばならないのですが、たいへんな重労働なので実際は2年に3回くらいです。しかも、ここのところ船外機船で海に出る、アサリ漁ばかりだったので、余り必要を感じず、実際に陸揚げしたのは半年くらい経ってからでした。

こちらの都合で、大幅に設計図の発送が遅れてしまいましたが、とにかく写真を撮って各部を計測し、イングランドに送りました。

フィリップ氏は、こちらの遅延にもかかわらず、快く製作を承諾して下さり、かくしてウチの船の模型化が始まりました。

もともと電気屋さんだったフィリップ氏は、コンピューターで写真から設計図を起こし、それに基づいて本物の(大きな)船を造船するのと、同じ行程で製作しています。

ウチの船のようなFRP船は、実際には大きな型を作って、そこにFRPを貼り付け、キールを取り付けた後に型抜きして、建造されます。フィリップ氏の製作工程は、型抜きできない大型船のものです。1隻しか製作しないので、これでいいわけです(船体ができた後、案外複製のため型取りしたりして?!)




フィリップ氏からの最新報告は、順次このホームページに掲載していきます。
日本漁船がイングランド人モデラーの手によって、どのようにモデル化されるのか、今後の進展にどうぞご期待ください。

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